あとがき

 2007年の春頃、スキーの転倒による頸椎捻挫が原因と思われる原因不明の目まい・耳鳴り・頭痛・肩首背のこり・筋痛・自律神経失調・うつ症状で、脳神経外科・耳鼻科・眼科・精神科・鍼灸院・整体院・接骨院と様々な診療機関をさまよった。
最初の医師の診断は「気のせい…」だった。

 だが、やっぱり「気のせいだった」かも知れない。気圧変動、気分変化、気の持ちよう。この三要素が一番絡むからだ。
三度のブラッドパッチ手術を受けたが、目まいは酷くなるばかりで、日の出日没毎月やって来る満月新月の大潮。太陽・地球・月等の宇宙の運行には、勝てっこなさそうだ。
 ここに記した事は、数か月というホンの短期間に私が見てきた事実と、考察してみた「仮説」か頭をやられた病人の戯言に過ぎないかも知れない。
 むろん到底私一人では解明できない事ばかりだった。
 だが、30年以上前、私が信州大学理学部地質学教室に在籍した当時、新生代第四紀の始まりは今から181万年前と定義されていた。
 その当時、私のような愚かな学生は自分が今何をやっているのかも、よくわからなかった。
 しかし、私達学生が八ヶ岳火山を中心に卒業研究や団体研究で行っていた成果は、30年後の2009年6月になってようやく実っていた。
 「国際地質科学連合」によって、新生代第四世紀の始まりは258万8000年と変更された。人類の登場と重なっているのだ
 新生代第三紀と第四紀の境目が、一気に70万年以上も動いてしまったのだ。
 今、縄文時代の始まりも1万5~6千年と、どんどん過去へと遡っている。
 あの時私達を指導していた教官は、あの時、既にそれに気づいていた。

 この数ヶ月でなんとなくわかったことは、松本平には厳しい氷河期を経て多くの火山が噴火する最中に非常に様々な民族が集まって、互いの特徴を生かし融合しながら暮らして来たと言うこと。もちろん争い事もあった。しかし、それらのいわゆる「縄文人」たちは、未だこの地に生息しており、全世界に貢献する様々な技術を持ち続けている事である。

 長屋のお隣の元芸妓「まゆみ」さん曰く『日本銀行松本支店長が勤まれば、将来出世出来る』と言うくらい松本は重要な場所なのである。また、フォッサマグナの中央という地質学的にも、この日本列島という島弧の成り立ちにとって重要な場所でもある。

 今、地球という小さな惑星は宇宙的には寒冷化に向かっているというが、それを遙かに上回る速度で人類が温暖化ガスを放出し続け、さらに最も愚かしく無駄な「戦争」という「殺し合い」を続けている。
 地質学、考古学、歴史学、語学、生物学、植物学、物理学、化学、天文学、医学、薬学、経済学、哲学、宗教学…山岳、音楽、
とにかくガクのつくものやっているヒトは、バカげた垣根をとっぱらって研究し直して欲しい。

 いや、むしろ学とか学歴とかは邪魔にるばかりか、無い方がズッとイイかもしれない。やわらかい頭、頭をおバカにリセット出来る柔軟性が必要だ。

 上の段に住む信州大学第一期生の「巽」大先輩のは「永井さん一緒にマレットゴルフでもやりましょ」と穏やかにおっしゃり、今にも噴火しそうな私の頭を時々休めさせてくれる。そう言いながらも、安曇野で専業農家に負けない美味しい野菜を育て、また流れる水路を見つめては、浅間温泉でのホタルの増殖に、今も挑んでおられる。

 世界で一番の火山国、災害の多い所、アマゾン地域に次いで降水量が多く四季があって豊かな山・川・海を持つこの島から武器に頼らない世界の平和と共存を発信して欲しい。

 さて、大学の修士課程は普通2年かけて修めるものだ。私はまだ一年もかかっていないので、とりあえず「桜ヶ丘古墳」の謎の天冠の不整合に挑みましょ。

 ただし自分の命のある限り。
 一生とは、今夜までなのか明日までなのか、10年先までなのかそんなことは誰にもわからないのだ。
 だって、今はもうすでに過去なのだから。


「みすず刈る 信濃の真弓 引かずして 
弦はくるわざ 知るとは 言はなくに」 
    
『三薦苅 信濃乃真弓 不引為而 強作留行事乎 知跡言莫君二 』 (万葉集九七)

楽器は、弾かなければ音がでない。
男女は交わらねば子孫は繁栄しない。

今学期はこれでおしまい


【信州大学理学部地質学教室第四紀学教授 故 郷原保真師に献げる】

「図表のミランコビッチの周期曲線縄文時代の海岸線について思うところを述べよ」
信州大学理学部地質学科第四紀学考査問題

「なぜここに路があるのか?なぜそこに池があるのか?君たちはそれを考えないのか!」 郷原保真


2013年8月12日
美ヶ原高原美術館にて